いわゆる製作後記であり、言い訳です。重大なネタバレ、設定を多々含みます。
できればトゥルーエンディング~隠しダンジョンクリア後にお読みください。
開発のきっかけ(動機)
夢で見たカードと剣を使いながら戦うカッチョイイキャラクター(プレイヤー)を動かせるゲームが作りたくて。
最初はもっと「カードバトル」に重点を置いただけのシンプルな戦闘でした。
超必殺技という概念も無く、唯一の必殺技らしきものは「カードを5枚連続で使える能力」だけ。
プロトタイプの動画は何人かにお見せしたので記憶に残っている人もいると思います。
でもこの時期から開発コンセプトの一つにとりあえず
「自由にあちこち行ける」「目的を明確にしない」「プレイヤーにある程度自分で探索させる」
という構想はありました。いまいち実現化できていないのが情けないですが……。
今作を振り返って
もちろん細かい部分で不満点(特にシナリオ)や付け足したい事はありますが
「絶対入れたかった要素」はとりあえず全て入れました。
本作の反省点
1.シナリオと世界観
一応矛盾が無いように「どうとでも取れる言い訳のできるシナリオ」であるとは思います。
フリーシナリオという事で若干の補正もかかってるかも。
(でもフリーシナリオってシナリオの教科書本によると「つまみぐいシナリオ」と言ってあまりよろしくないものらしいです)
ラストシーンに関してはあえてどうとでも取れる描写にしました。
ハッピーエンドと思えばハッピーエンドですし、救いが無いと感じる人もいるかもしれません。
そこはプレイヤーの方のご想像にお任せします。
最初にどんなシナリオかを決める際に、「単純なハッピーエンドにだけはしない」と決めていました。
しかし後味の悪いバッドエンドも避けたい……という葛藤から生まれたのが今回のエンディングです。
本作メインシナリオのテーマは「エゴ」です。主軸となる3人のオリジン・プログレッサー、
テミス、ミカド、プレイヤー。3人とも誰かの為ではなくそれぞれ自分の個人的な理由で動いています。
テミスは自分の思い通りになる世界が欲しく、その為に他者を犠牲にするという選択を。
ミカドはテミスに奪われた娘の意識を取り戻すという理由で行動していますが、
それも結局は自分の為でもあります。プレイヤー(過去)はテミスの独善的な世界創造を止めるために
別の独善(偽りの世界を破壊すること)を貫き通しました。正義の反対は別の正義理論ですね。
悪に必ず報い(罰)があるシナリオ
本作で細心の注意を払った部分です。本作では終盤にバンバン人が死にますが、単純にお涙頂戴や
登場人物整理で死なせている訳ではありません。
というのも劇中で死亡している人物(メインキャラクター)は全員何らかの悪事を働いているからです。
テミスは自身の野望達成の為に幾人もを殺害し、
ミカドは原罪戦争を止める為に二つの国の国民を全て殺害し、
ギリアム、ヴァネッサ、アスティルテはミカドの野望達成の為に何人もを殺害しています。
なので、シナリオ構想がまとまった時点で既に悪事を働いているこれらのキャラクターに関しては
絶対に幸せにしない、と決めていました。
ギリアムが最後自殺したのは、自身の罪を認識していたから、もう償いようがない事をしている事を自覚していたからです。
やるべき事はやったと。ヴァネッサもギリアムの決意を知った際には後を追うつもりでしたが、
ギリアムからミカドとプレイヤーの事を託された手前、死ねなかった。そして最後はある意味一番おいしいポジションでした。
色気もラブコメもロマンスもない本作においてはある意味一番ヒロインみたいなキャラクターですね(笑)
本作で上記のような「罪」を犯していないメインキャラクターはプレイヤーとミュークだけです(プレイヤー(過去)は除外)。
なのでミカドやテミスを断罪できるのは空虚な存在であるプレイヤーだけ、という構図になっています。
しかしプレイヤー達も(トゥルールートでは)また自らの独善でテミスを殺害し、罪を犯したのでああいった形の結末になりました。
プログレッサー、劇中の世界は何だったのか?
プログレッサーは「神」から力と創世の手段を託された「代行者」です。
アクセスツールであるディバイダーを介して様々な事象にアクセスできます。
プログレッサーとして覚醒した瞬間、プログレッサーとしての基礎知識を得ます。
この辺は劇中でミカドが説明した通りです。
劇中の世界はパルテノンを使ってある惑星上に創造されたハリボテ、偽りの楽園です。
この文章では以下「ハリボテ世界」と称します。
「ラゲル(檻)」という名前はそんなハリボテの箱庭を牢獄に喩えてネーミングしました。
秩序、混沌、虚無、の力とオルタネイトとは?
オリジン・プログレッサーは人からプログレッサーへの覚醒時に何らかの特殊能力に目覚めます。
その力の象徴が秩序、混沌、虚無です。この辺は正直説明不足感が否めません。もう少し掘り下げるべきでした。
劇中でミカドが原罪戦争を引き起こした二国を滅ぼしていますが、
これは「混沌」の力で人心を操作して二国だけを徹底的に集中して殺し合わせた、というのが真相です。
劇中に登場したプログレッサーの能力としては
秩序:ディバイダー「リンガ&ヨーニ」/人心操作(洗脳)
混沌:ディバイダー「アヴェンジャー」:人心操作(強制暴徒化)
虚無:ディバイダー「ロストエス」:全ての他能力のキャンセル、存在の消去
のようになっています。秩序と混沌の能力が似ているのは相反しているようで切っても切れない関係だから。
プレイヤーのロストエス、は失われた欲求、欲望を意味しています。無くした精神の残りカス的なもの結晶とも言えるでしょうか。
オルタネイトに関しては、普通の人間がプログレッサーから体液(血液など)を粘膜接触されて
突然変異した存在です。吸血鬼的な。資質があればオルタネイトになれますが、無ければアウター化します。
存在のレベル的にはアウターと大差ないのでディバイダーなども使えません。
発現する特殊能力も精神干渉のようなものや事象を極端に捻じ曲げる事もできませんし、
自らに体液を与えた「親」が死ぬと同時に「子」であるオルタネイトも死亡/消滅します。
ディバイダーとは何だったのか?
劇中でもギリアムが述べたとおり、オリジン・プログレッサーのみが扱える事象へのアクセスツールです。
それぞれ所有者の行動理由や信念といったものの名を冠します。
所有者が死亡すると当然ディバイダーも消滅します。
これが実はある場面での伏線になっているんですが、お気づきになられた方はいるのでしょうか?
アウターと霧は何だったのか?
主にガイロス洞窟・深部などに満ちている霧の影響で突然変異した原生動物です。
ただの人間が長時間霧に触れ続けると※1アウター化するケースもあります。
このアウターを人工的に制御しようとしたのがドーロス司祭の作っていたラスールです。
テミスは密かにドーロスを洗脳し、ラスールを作らせてミカド達を抹殺しようとしていました。
しかしヴァネッサにドーロスが発見された事により、ラスールは全て廃棄処分となりました。
(ドーロス死亡時点で非常用の証拠抹消装置が動き、ラスールを処分)
※1 エネミーとして登場するゾンビ、グール、スケルトンなどがそのケースです。
霧、というのはハリボテの世界が崩れる際に発するガスのようなものです。
劇中でも述べられている通り、ハリボテ世界自体に限界が来ているんですね。
なのでそのガスによって本来ありえないような存在(アウター)が生まれてしまったのです。
テミスはこの事態に劇中のプログレッサーの中で最も早く気づき、少しでも世界の寿命を延ばす為に
前述のドーロス司祭を使ってどうにか解決しようとしていました。
ドーロスは自衛の為に魔石(聖石)を求め、ミカド達から身を守ろうとしていましたが、
その前に妙な気配を感知したヴァネッサに見つかって……というのが序盤の真相です。
ヴァネッサ達はミカドの命令で封印の鍵を探しつつ、テミスに関係する存在や
ミカドの目的達成の障害になりそうなものを排除していました。
世界観
本作の世界がありふれたファンタジーでありながら、どこか奇妙な世界なのは
劇中でテミスが述べている通り、中途半端な創世が為されたからです。
テミスの願望(平和な世界)とプレイヤー(過去)の望んだ現実の世界が
歪んだ形で融合して顕現した、と考えて下さい。
2.システム
パーティメンバーがいないこと
企画の段階ではエレノア、リゼ、トト、ミカド、ヴァネッサ、リーリエの6人と
一緒にパーティを組んで戦う事ができる予定でした。
しかし「喋らない主人公(ドラクエタイプ)」である以上、そうすると完全に主役を奪われちゃうんですね。
シナリオを動かす際の不都合も出てくる。
さらに設定上、人間はプログレッサーの戦闘にはついていけないことや
キャラクターをメニューでカスタムできるようにする、戦闘中の処理の事を考えると、明らかに自分のキャパシティを
超えてしまう事がプレイヤーのデータを作成した段階でわかってしまいました。
パーティを組めるようにすれば恐らく後二年は開発が伸びていたでしょう。本作にパーティメンバーがいないのは
そういう理由からです。(次回作では複数vs複数の予定です)
レベルや戦闘に関して
このゲームは基本ヌルゲーです。クリアした方ならお分かりだと思います。
必要経験値が固定ですから、雑魚を数回倒せば簡単にレベルアップします。
この辺りは正直レベル上げ作業が好きな人には受け入れられないでしょう。
しかし自分自身、レベルが上がるたびに必要経験値が増えるのが
あるネトゲの影響でトラウマなんですね。
何より本作の戦闘が楽しめる人ならともかく、戦闘自体がイマイチ受け入れられない人にも
サクサク遊んでもらうにはどうすればいいか、という事を考えた結果です。
ただし単にヌルゲーにするだけでは当然ダメなので、難易度要素の追加や
隠しダンジョンなどのやりこみ要素を追加する事で挑戦のし甲斐があるようにしました。
エリュシオン最奥にいる彼女などがその例です。倒す度に強くなります。
作者の用意したバランスで遊ばせるよりも、お好みなバランスで気軽に楽しんでほしい、という
考えからの仕様ですが、結果としてかなり人を選ぶゲームになってしまいました。
3.「喋らない主人公(ドラクエタイプ)」にした事
主人公は喋らないキャラにした方がシナリオ適当で済むしプレイヤーの感情移入もしやすいから
楽だよね、という考えで喋らない主人公になりました。
が、これがまずかった。RPGで喋らないキャラが主人公だとこんなにも物語の
盛り上げようがないとは。おのずと話し相手が一方的にしゃべりっぱに。
もちろん精神を失ったという「喋らない理由」というのが一応あるんですが……。
当分は喋らない主人公モノは作りません(笑)
続きます。